日本むなしばなしシリーズ3 続うらしまったろう   

昔々あるところに、裏島という名の漁師がおりました。
ある日裏島が浜辺を歩いていると、
子供たちがよってたかってカメに暴行を加えている場面に遭遇しました。

裏島「こらこら、ひどいことはやめなさい!」
子供「なんだよ!? 部外者はあっち行ってろよ!」
裏島「君たちカメさんの気持ちになって考えてみなさい。こんなことされたら嫌だろう?」
子供「うるさいな! 関係ない人間は引っ込んでてくれよ!」
裏島「聞き分けのない子だな。仕方ない」

バシッ!
裏島は子供たちに張り手を食らわせました。

子供「な、何するんだよ!?」
裏島「どうだい? 傷つけられる痛みが分かったろう?
    君たちが今やっていることはこういうことなんだよ」
子供「くっ、俺たちの事情は何も知らないくせに! 余計な口出しすんなよ!」
裏島「事情? どういうことだい?」
子供「こいつが・・・このカメが体当たりして船を沈めたせいで・・・
    おいら達の父ちゃんと母ちゃんは・・・うっ・・・ぐすっ・・・」
裏島「・・・そ、そうだったのか。・・・でもカメさんだって悪気があったわけじゃ・・・」
子供「違う! おいら達だって事故なら仕方ないと思った。素直に謝れば許そうと思った。
    だけど、だけどこいつは・・・」
カメ「ヘッヘッへ・・・」
裏島「か、カメさん!?」
カメ「そうだよ。俺がガキどもの両親の乗った船を沈めてやったんだよ」
裏島「な・・・どうしてだ? どうしてそんなひどいことを!?」
カメ「ひどい? ひどいのはてめえら人間の方だろ!」
裏島「何!?」
カメ「俺の親友のスッポン君はな、そりゃあいい奴だったんだ。
   スッポン君の両親は人間に捕まって鍋にされて食われちまったが、
   それでもあいつは恨み言一つ言うことなく、幼い妹のために一生懸命頑張ってた。
   そんなスッポン君をてめえら人間は・・・
   残された妹は今も暗い海の底で泣いてんだ!
   たとえスッポン君が許しても、俺は絶対にてめえらを許さねえ!!」
裏島「・・・し、しかし、我々だって生きるために食べることはやむを得ないことで・・・」
カメ「ヘッ、人間ってのはいつもそうだな。自分たちの都合しか考えねえのさ。
   ま、いいさ。だったらてめえらを海の底まで引きずり込んでサメのエサにしてやるよ。
   そこのガキどもの親のようにな!」
子供「きさまーーー!!!」
裏島「・・・・・・・・・」

結局裏島は彼らを止めることが出来ませんでした。
そして自分の早計な行動を恥じ、激しく後悔しました。

「俺は、俺はなにを偉そうに子供に説教なんかしてたんだ!
 なにが『カメさんの気持ちになって考えてみなさい』だ!
 何も分かってなかったのは俺じゃないか! 誰の気持ちも理解してないじゃないか!」

裏島は愚かだった自分を戒めるため、新たな自分に生まれ変わるため、
一人世界を巡る旅に出たのでした。


60年後、すっかり老人となった裏島は再びこの場所に戻ってきました。
自らの人生における最大の邂逅があったこの場所で、すべてに決着を付けるために。
そう、彼は長い旅路の果てに、ある一つの結論を導き出したのです。

「・・・あのカメ、なんで人の言葉を喋ってたんだろう」

ぽつりとつぶやいた裏島の言葉は、
煙のように儚く静かに空へと吸い込まれていきました。


その後の裏島について知るものは誰もいない。
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by sabasuke | 2006-11-02 03:08 | 雑記

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