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山の熊さん   

「今年は人里に下りてくるクマの数が多い」
という話を夕方のニュースで聞きました。
人に危害を加えたりしたら即座に駆除されてしまうわけですが、
クマはただエサを求めて遠出してきただけ。
しかも山にエサが無くなったのは人間のせいでもあったりして、
人間ってのはクマにしてみれば大変迷惑な存在でしょう。

まあ困っているのは人間も同じ。
数の減少が心配されるクマを保護すべきなのか、
それとも駆除せざるをえないのか、
様々な意見があるようですが、
何を隠そう実は僕、以前実際にクマを見たことがあるのです。

「動物園で」とかそういうオチじゃないから安心して。


あれは僕が小学校低学年ぐらいの時、
夏休みに母親の実家(ど田舎)へ遊びに行ってた時のことでした。

ある日の早朝、突然伯母さんがこんなことを言い出しました。
「近くでクマが捕まったらしいから見に行くべ」
別に僕はたいしてクマなど見たくありませんでしたが、
当時良い子ぶっていた僕は一応喜んだフリをして、
従兄弟とともに伯母の車に乗り込みました。

そのまま車に揺られること十数分、
「近いって言ってたのに結構遠いじゃねえか」と不満が募り始めたころ、
車はとある山の中で停まりました。

「おう、クマ見に来たかよ」
車から降りると見知らぬオッサンがいきなり話しかけてきました。
馴れ馴れしい態度に若干腹を立てながらもとりあえず挨拶する僕。

「ほれ、あそこにクマ居るぞ」
オッサンが指差す方に目を向けると、
確かにそこには檻のような物に入れられたクマがいました。
どうやら罠に掛かって生け捕りにされた野生のクマのようです。

クマの様子を見るため僕が檻に近づこうとしたら、
「こら、危ないからそれ以上近づいたらいかん!」
とオッサンが制してきました。

いや、まだ檻まで50メートル以上も離れてるじゃん!
こんなに遠くからじゃはっきり見えないじゃん!
僕は散々オッサンに文句を垂れてやろうかと思いましたが、
初対面でいきなり悪態つくのもアレなので特に何も言いませんでした。

それから5分ほどが経過した時、
どこからともなく現れたのは鉄砲を担いだ男たち。
彼らは一直線にクマのいる檻のもとへと向かっていきます。
・・・え? 何? これってまさか・・・マジで!?
 
「おい、今から鉄砲撃つから耳塞いどけよ」とオッサン。
その偉そうな言い方にまたもや不満を感じながらもしぶしぶ従う僕。
そして・・・・・・

山中にこだまする命の終わりを告げる合図。
耳を塞いでいてもなおはっきりと聞こえたその爆音が消えた時、
先ほどまで檻の中で暴れていたクマは静かに地に横たわっていました。


と、儚くも切ない僕とクマの出会いの物語だったわけですが、
結局伯母さんはいたいけな少年にこのようなシーンを見せて何がしたかったんでしょう?
衝撃的な現実を見せることによって世の中の厳しさを教えるとか何かそういうことですか?

なおそのクマはその後お肉となって人々の胃袋に入っていったそうです。
生きるということはどんなことなのか、深く心に刻み込まれた出来事でした。
うーむ、見事に伯母さんの思惑通りになってしまったか。なんか悔しい。

ま、いくらクマが強くても人間様にゃかなわんってこっちゃね。

by sabasuke | 2006-10-20 03:14 | 雑記

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